(海洋気象 昭和41年度(1966)設置) 海洋研究所 要覧より
海洋と接する大気は、海洋との間で絶えずエネルギー、運動量、水をはじめとする物質の交換を行っている。その結果、海洋上の大気中には様々なスケールの擾乱が発生する。これらの擾乱は、乱流、降水、水の相変化、力学などの過程が絡んだ非常に複雑で興味深い研究対象であるばかりでなく、日々の天気変化や気象災害を通して人間生活にも大きな影響を与える。
当分野では海洋上の大気構造や気象擾乱を観測データの解析、数値シミュレーション、力学理論、室内流体実験などの多彩な手法を用いて気象学的立場から研究するとともに、大気と海洋に発生する流れや擾乱の機構を地球流体力学の見地から統一的に研究している。
 日本周辺海洋上に発生する大気擾乱の研究


冬季、大陸からの寒気が北西季節風に伴い流出するとき、日本周辺の海洋上では活発な大気・海洋相互作用が生じ、メソスケール(水平スケールが数kmから1000km程度)の低気圧(図1)や前線など様々な大気擾乱が発生する。しかし、現象や寒冷な荒天の海上で生ずるため観測が乏しく、その構造や力学は未解明のものが多い。
 活発な対流雲の生成・組織化機構と集中豪雨の研究

海洋上の大気擾乱の中では、個々の対流雲とこれが組織化されたより大きな降水系の間の相互作用がしばしば重要な役割を演ずる。活発な対流雲(図2)が組織化され長時間停滞すると集中豪雨を生ずることになる(図3)。対流雲の力学やその組織化機構の解明は、気象学的にも社会的にも重要な課題である。

 大気海洋間のフラックスに関する研究
台風は海洋から供給される多量の水蒸気をエネルギー源として発達する一方、その強風により、海中に活発な混合、湧昇、慣性重力波などを励起する。また、大気・海洋は地表面での運動量の交換を通して固体地球の回転の変動にも寄与している。これら、大気海洋間の物理量の交換過程やその結果生ずる大気・海洋中の運動の力学を研究している。


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This page was updated on May 12, 2004.