研究活動

世界の海を巡る海洋大循環は、熱や塩分、二酸化炭素などの温室効果気体、浮遊生物や生物に必要な栄養塩などを運び、熱や物質の循環、海域特有の水塊の形成と輸送、海洋生物の生育などに寄与し、地球の気候や海水構造および海洋の生態系に大きな影響を与えています。

日本列島の東では、南から温かい海水を運んでくる黒潮と北から冷たい海水を運んでくる親潮が接近したのちともに東向きに流れ、複雑な海洋構造をつくり出しています。これらの海流は、北太平洋の表層循環である亜熱帯循環と亜寒帯循環を形成し、数年から数10年程度の規模の気候変動や生態系変動に大きな影響を与えています。一方、中・深層循環は、海洋の水塊分布や長期特に数10年以上の規模の気候変動に支配的な役割を果たしています。深層循環は、北大西洋の極域で冬季に沈降した海水が南下して南極周極流に合流し、その一部が太平洋を北上して北太平洋で湧昇するという雄大な海水循環です。中・深層水の湧昇には、上下に海水を混合して深層水の密度を低下させる乱流鉛直混合が関与しています。深層大循環の終着点である北太平洋での循環構造や鉛直混合の理解は、海洋大循環の全体像を理解するために重要です。

係留流速計の回収

海洋大循環分野は、こうした海洋循環の実態と力学、および海洋循環が水塊の形成や分布に果たす役割の解明を目指しており、特に北太平洋での研究に力を入れています。

現在の主な研究テーマ

太平洋表層の海洋構造の変動解明

表層の海洋循環やそれに伴う水温・塩分構造の変動は、気候や水産資源の変動に大きな影響を与えます。世界規模の自動観測網や独自の観測から得られた水温・塩分などのデータの解析により、実態解明をめざしています。

太平洋中・深層循環と鉛直混合の実態と力学

深層循環の終着点である北太平洋で、中・深層循環がどうなっているか、中・深層水の湧昇がどのようにして起きているのか、その要因である鉛直混合がどうなっているのか、は海の最も大きな謎のひとつです。私たちは、海水特性の高精度分析、係留系による長期連続測流、乱流観測、水中グライダなど新しい観測手法の開発、研究船による観測とモデル計算を用いて、深層循環と鉛直混合の実態と力学を調べています。

海洋・気候・生態系の長期変動の解明

潮汐の18.6年振動によって乱流鉛直混合が変化し、親潮や黒潮の変化を通じて、海洋・気候・生態系の長期変動を引き起こす、ということが徐々に明らかになりつつあります。オホーツク海や親潮・黒潮の観測や、海洋・気候・生態系の長期変動の研究を展開しています。